ラブ・シンドローム 34
それがアマゾナイトの持つ不思議な力だと言う。
ガーネットと組み合わせると「大きな幸運」をもたらし、ターコイズと組み合わせると「夢の実現」を手助けする力を持つと書かれている。
「意味を知ってて買ったわけじゃねぇよ。なんとなく見た瞬間にオマエにピッタリだと思っただけだ」
「それって…」
「なるんだろ?医者に」
決して諦めて言ってるわけじゃないのが伝わる。
本気でアタシの夢を応援してくれてるんだ。
控え目に輝く天然石を握りしめると、胸が露わになるのも構わず道明寺に抱き着いた。
「道明寺…本当に黙っててごめん、ひとりで決めてごめん」
「オレはオマエに4年待ってろと言ったんだ。オマエが進みたいって言うなら何年でも待ってやる」
「ありがとう…本当にありがとう…」
「叶えろよ。途中で投げだしたら許さねぇからな」
うんうん、と何度も頷いて道明寺の顔を見上げると、少し照れてように微笑んでいた。
「あんまジロジロ見んなよ」
「やだ、ずっと見てたい」
「また犯すぞ」
「ハイっ、もう二度と見ませんっ!」
「それは困る」
文字だけの気持ちの見えないやり取りで、あんなに不安であんなに腹を立てていたのがバカらしくなるね。
温もりを感じて、声を聞いて、表情を見ながら会話することがこんなに大切なことだなんて思わなかった。
「ただ…」
「うん」
「オレはオマエに会うことを諦めるつもりはねぇぞ。オレもできる限りオマエに会う努力はするし、オマエもそうであってほしい」
「そうだね」
きっとすごく大変なことなんだと思う。
夏休みのNYと今回の一時帰国を道明寺がどれだけ大変な思いをして作り出したのか想像もできないけど、それを可能にしたアンタはすごいと思う。
きっと今よりも難しい恋になるはず。
「ありがとう、アタシ、絶対にあきらめないからね」
「よし、プレゼント交換終了だな。今日はなにすんだ?ずっとベッドにいてもいいぜ」
「そんなのヤダ!デートしよう、デート!」
アタシたちには今回も時間に限りがある。
忙しいオトコが勝ち取った時間だもん、有意義に使わなくちゃね。
「デートだぁ?NYも東京もさみーよ。どっか暖かいとこでも旅行に行きてぇな」
「沖縄とか?」
「どこでもいいけどな、暖かければ」
「国内はどこも寒いんじゃない?」
「ケチくせぇこと言うなよ」
「ケチってアンタ…そもそも帰国したばっかなのに、よくまた国外に出ようと思うよね」
暖かいところってどこだろう?なんて真剣に考えていると、チュッとキスをされ
「バカ、オレはオマエさえいればどこでもいいんだよ」
なんて恥ずかしくなるようなことを平気で言う。
「もうオープンしてるの?」
「なんの話だ?」
「ほら、アンタがNYに行く前にヘリで行ったあの島」
***
年末、しかもクリスマスに貸し切りにするなんておかしなことを言うオトコをなんとかなだめて、アタシと道明寺は3月に訪れたあの島へやってきた。
さすがに海に入ったり、プールで泳ぐのは無理だけど、東京よりもずっと温暖で、日中は半袖に1枚羽織るだけで十分だった。
制服のまま落ちたプール
何もしないまま朝まで抱き合って寝た部屋
あの時と違うのはオープンしていて少し賑やかになっているだけ、美しい景色は何ひとつ変わらなかった。
コートにセーター、タイツにブーツという真冬の格好をしていたアタシも、今は薄手のワンピース1枚で大好きなオトコと手を繋いで歩いてる。
まったく、いつの間に準備させてるんだか、と思うのだが素直に感謝しようと思ってる。
※天然石についての出展 「星の種」
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